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作家の悩み百選 No.022

売れる作品か、描きたい作品か

「『売れる作品』と『描きたい作品』の間で迷う」。買う人が何で選んでいるかを数字で見て、迷いの抜け方を考えます。

明るいアトリエのイーゼルに、色のある描きかけの作品が置かれている

こんな迷いはありませんか

「『売れる作品』と『描きたい作品』の間で迷う」

売れそうな題材や色に寄せた作品は、どこか自分らしくない。けれど、描きたい物だけでは、暮らしが心配になる。

キャンバスの前で、どちらを描くか決められない。描き始めても、途中で迷いが出てしまう。

ここで、ひとつ考えてみてください。あなたの言う「売れる作品」は、誰が決めたものですか。

よく売れていると聞いた題材。展示で反応が良かった色。それは、今の限られた買い手の好みかもしれません。

どちらを選んでも、もう一方を捨てたような気持ちになる。周りから「もっと売れそうな物を」と言われ、筆が止まることもあるでしょう。

「売れる作品」は、
誰かが決めた正解かもしれない。

あなたは、本当は何を描きたいのか、言葉にできますか。

迷い続けると、どうなるか

売れ筋を追う作家が、どれくらいいるのか。調べた全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

「売れる作品」と言われるものは、今買っている人の好みから生まれています。その人たちに合わせ続けると、まだ作品を買ったことのない人には届きにくくなります。

売れ筋に合わせた作品は、ほかの作家の作品とも似てきます。似た作品が並べば、見る人はあなたを選ぶ理由を見つけにくくなります。

売れ筋を追いかけるほど、次の売れ筋を探す日々が続きます。

好みや流行は、時代とともに移っていきます。今の売れ筋も、ずっと続くとは限りません。

寄せきれず、振り切れもしない作品は、見る人の心にも届きにくくなります。迷い続けるほど、作品から自分らしさが抜けていきます。

逆に、描きたい物だけを描いても、届け方を考えなければ、見てほしい人に出会えません。どちらか一方だけでは、苦しさが残るのです。

迷いながら描いた作品は、完成までに時間もかかります。描く数が減れば、見てもらう機会も減っていきます。

寄せ続けるほど、
あなたの色が薄れていく。

外から見てきた、わたしの感覚

明るい白い展示室で、色彩豊かな原画の前に立つ人の後ろ姿
原画の前で、心が動いた瞬間(イメージ)

わたしは、50歳を過ぎて初めてアートを買いました。

それまで、アートにそれほど興味はありませんでした。本物の作品の前に立って、心をつかまれたのです。一目惚れでした。

あとから、なぜ買ったのかを自分に問いかけました。答えは、原画の力でした。作家が本気で描いた物には、人を動かす力があります。

50歳を過ぎるまでアートに出会わなかったのは、もったいない人生だったと思います。それほど、原画の前で心が動いたのです。

売れていない作家の中にも、本当に素敵な作品を描く人はたくさんいます。その作品は、まだ届くべき人に届いていないだけだと感じています。

一般の人の市場は、今の買い手の市場よりも、ずっと大きいと感じています。そこには、まだ誰の好みにも染まっていない目があります。

わたしのように、それまでアートに縁のなかった人の心も、本気の作品は動かします。売れ筋を知らない人ほど、作品そのものを見ているのかもしれません。

もちろん、暮らしを支えることも大切です。売れる作品と描きたい作品は、どちらか一方を選ぶ話ではないのかもしれません。

人の心を動かすのは、
本気で描いた原画の力。

数字で答え合わせ:続けたいのは、描きたいから

この感覚を、数字で確かめます。芸団協が2025年に、芸術家へ「10年後もこの仕事を続けたいか」を聞いています。

「続けたい」と答えた人は74.4%でした。「分からない」は21.0%です。

4人に3人が、この先も続けたいと考えています。続ける力のもとにあるのは、売れ筋より、描きたいものを描く喜びではないでしょうか。

売れ筋に寄せ続けて、描く喜びが薄れてしまえば、続ける力そのものが弱っていきます。

「本気で描いた作品の力が人を動かす」という感覚は、一部当たりです。作家の多くが続けたいと考えていることは、数字で確かめられました。ただ、描きたい作品と売れ筋の作品のどちらが選ばれるかは、数字では分かりません。

つまり、描きたい作品を本気で描き、どこに飾ると映えるかを添えて届ける。その形なら、迷いの二択から抜け出せます。

部屋に飾る人に届けるなら、作品の題材を変える必要はありません。どんな部屋に合うのかを、言葉や見せ方で伝えればよいのです。

描きたい作品のよさを、見る人の暮らしの言葉で伝える。それは、自分を曲げることではありません。

描きたい物を描きながら、選ばれる理由も伝えられる。そうなれば、キャンバスの前で迷う時間は、描く時間に変わっていきます。

描きたい作品に、
飾る場面を添えて届ける。

7ARTSで、一緒にできること

明るい寝室の白い壁に、静かな色合いの作品が1点飾られている
描きたい作品が、合う場所に飾られる(イメージ)

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。

何を描くかは、作家にしか決められません。7ARTSが、描くべき題材の正解を出すことはできません。

そのうえで、今日からできることがあります。描きたい作品と、売れると思う作品を、それぞれ書き出して並べてみることです。重なる部分が、意外に見つかるかもしれません。

迷ったときは、描いた作品を誰かに見せて、どの作品に心が動いたかを聞いてみるのも1つの方法です。答えは、見る人の反応の中にあります。

迷いの根っこが、暮らしのお金の不安にあるなら、そこは分けて考えましょう。お金の計画は、ファイナンシャルプランナーや税理士など専門家に相談できます。

描きたい物を描く時間と、暮らしを支える時間。その配分を決めるのも、作家自身です。

2つを分けて考えるだけで、迷いが軽くなることもあります。

何を描くかは、
あなたにしか決められない。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。いちばん自分らしい作品を1点選ぶ、飾ってほしい場面を一言書く、その作品を見てほしい人を1人決める
今日、作家がやること

最近の作品の中から、いちばん自分らしいと思う1点を選んでみてください。売れるかどうかは、いったん考えなくてかまいません。

次に、その作品を飾ってほしい場面を一言書きます。朝の玄関、静かな寝室、にぎやかなカフェ。

飾る場面が思い浮かばなければ、身近な人に「どこに飾りたいか」を聞いてみてもかまいません。

最後に、その作品を見てほしい人を1人だけ決めます。描きたい作品に飾る場面が添えられたとき、迷いは届け方の工夫に変わります。

選んだ1点と書いた一言は、作品を紹介するときの言葉にもなります。迷っていた時間が、届けるための準備に変わります。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 芸術家の働き方:公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)「芸術家のセーフティネットの構築に関する調査研究報告書」(2026年3月)