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作家の悩み百選 No.035

作品がAIに学習されるのが不安

「自分の作品が勝手にAIの学習に使われているかもしれない」。不安との向き合い方を、外から見てきた感覚で考えます。

明るいアトリエの木の机で、描き上げた色あざやかな作品を手に持つ人の手元

こんな不安はありませんか

「自分の作品が勝手にAIの学習に使われているかもしれない」

SNSに作品を載せるたびに、ふと手が止まる。この画像も、知らないうちに誰かの道具に取りこまれるのではないか。

自分の絵とよく似た画像が、画面に流れてくることがある。偶然なのか、そうでないのか、確かめる方法も分からない。

作家の方からも、この不安をよく聞きます。何年もかけて育ててきた描き方は、作家にとって何より大切なものだからです。

しかも、相手の顔が見えません。誰に、どこで、どう使われているのか分からないことが、不安をいっそう大きくしています。

不安が大きくなると、作品を載せること自体をやめてしまう方もいます。けれど、見せるのをやめれば、作品は誰にも出会えません。

ここで、ひとつ考えてみてください。守ることと見せること、そのどちらかを選ばなければいけないのでしょうか。

隠せば守れるが、
誰にも出会えない。

あなたは、不安から、作品を見せるのをためらっていませんか。

不安のままだと、どうなるか

まず、この悩みに関わる数字を探しました。作品がどれだけAIの学習に使われているのか。作家のうち、どれだけの人が被害を受けたと感じているのか。

調べましたが、全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

数字が無いぶん、不安は形のないまま大きくなりがちです。分からないことほど、人は悪いほうへ想像してしまいます。

不安なまま調べものを続けて、制作の時間が減ってしまう方もいます。描くための心の余裕まで奪われるのは、何より惜しいことです。

一方で、何も考えずに大きな画像を載せ続けるのも、不安を先送りにしているだけかもしれません。

放っておくと、2つのことが起きます。1つは、不安から作品を載せなくなり、見てもらう機会を自分で減らしてしまうこと。

もう1つは、何も備えないまま載せ続けることです。いざ似た画像を見つけたとき、何をすればいいか分からず立ち尽くしてしまいます。

どちらも、作家にとって損な道です。必要なのは、怖がりすぎず、何も考えずに載せるのでもない、その間の道を見つけることです。

怖がりすぎず、
無防備にもならない。

外から見てきた、わたしの感覚

明るいアトリエのイーゼルに置かれた、筆の跡と絵の具の厚みがある色あざやかな作品
画面には収まらない、原画の力(イメージ)

わたしは、技術の専門家でも、法律の専門家でもありません。ここでは、外から作品を見てきた一人として、感じていることを書きます。

わたしは50歳を過ぎて、初めて本物の作品を買いました。実物の前に立ったとき、心をつかまれたのは、目の前にある原画の力でした。

絵の具の重なり、筆の跡、作品の大きさ。それは、画面の上の小さな画像には収まりきらないものだと感じています。

作家の方からよく聞く場面があります。似た画像を見つけて落ち込み、筆が止まってしまう。けれど、その作家にしか描けない原画は、手元にちゃんと残っています。

作品の前に立った人が感じるのは、画像の形だけではありません。その作家がその作品にかけた時間と、思いです。

画面の中の画像と、目の前の原画は、別のものです。作家が育ててきたものの芯は、原画と、それを描いた作家自身の中にあるのではないでしょうか。

画像は写せても、
原画の力は写せない。

数字で答え合わせ:買う人が、求めているもの

この感覚を、数字で間接的に確かめてみます。文化庁の調査で、ふだん著作権を気にかけているかを聞いています。

著作権を意識していると答えた人は39.8%でした。「好きなクリエーターを応援するために大切にしている」人も、12.9%います。

作品を買う人の多くは、実物を部屋に飾ることを思い浮かべて選んでいます。画面で眺める画像ではなく、手元に置く原画を求めているのです。

「作り手を大切にする人は、確かにいる」という感覚は、一部当たりです。作り手を応援するために権利を守ろうとする人がいることは、数字から読み取れます。ただ、AIの学習がどう影響するかまでは、数字がありません。

作家を支援したい、作家の作品を集めたいという人もいます。そうした人は、画像ではなく、その作家から買うことに意味を感じています。

どの作家が描いたのか。どんな思いで描いたのか。それが伝わる作品は、似た画像とは別のものとして選ばれます。

作品を見せる場所と、作家とのつながりを育てていく。そうすれば、似た画像が出回っても、選ばれる理由は残ります。原画と作家の名前が、いちばんの守りになります。

選ばれる理由は、
作家と原画に残る。

7ARTSで、一緒にできること

明るいアトリエの木の棚にスケッチブックが整然と並び、白い壁に描き上げた色あざやかな作品が飾られている
制作の記録を、作品ごとに残す(イメージ)

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。AIの学習を止める仕組みや、使われたかどうかを確かめる方法を、7ARTSは持っていないからです。

そのうえで、作家が今日からできることがあります。ネットに載せる画像は、大きすぎない大きさにする。画像に名前を小さく入れる。載せる場所ごとの利用の決まりを読んでおく。

もう1つは、記録を残すことです。下書きや制作途中の写真、描き上げた日付を、作品ごとに保管しておきましょう。自分の作品だと示す手がかりになります。

作品を発表するときは、作家の名前と作品の題、描いた年をそろえて載せておきましょう。誰の作品かがはっきりしていることも、守りの一つです。

AIと著作権の考え方は、今も議論が続いている分野です。自分の作品が使われたと感じたら、著作権に詳しい弁護士に相談してください。契約で扱いを決めたいときも同じです。文化庁のサイトでも、一般的な考え方を確かめられます。

守りながら見せる。その工夫を重ねることで、作品は不安の中でも人に届いていきます。

守る工夫をして、
見せることはやめない。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。ネットに載せている作品を1点選ぶ、制作の記録を集めて残す、載せている場所の利用の決まりを読む
今日、作家がやること

今ネットに載せている作品を、1点選んでみてください。

次に、その作品の下絵や、描いている途中の写真、仕上げた日を集めてください。それを1つのフォルダにまとめます。これが、あなたの作品の記録になります。

最後に、その作品を載せている場所の、利用の決まりを読んでみてください。画像がどう扱われるかが、書かれていることがあります。

読んで分からないところがあれば、運営している所に問い合わせてもかまいません。分からないままにしないことが、次の不安を減らします。

不安は、知ることで小さくなります。記録を1つ残した日から、あなたは作品を守る準備を始めています。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 鑑賞の状況:文化庁「文化に関する世論調査」報告書(2024年3月・全国18歳以上24,996人)