
こんな悔しさはありませんか
「美大を出たのに、絵で稼げていないのが悔しい」
何年もかけて技術を学び、卒業制作では評価もされた。それなのに、今の収入のほとんどは、絵と関係のない仕事から来ている。
同級生の活躍を耳にするたびに、胸の奥がちくりと痛む。学んだことが、無駄だったのではないかとさえ思えてくる。
学校を出て何年もたつと、学んだ技術を使う機会も減っていきます。手が覚えていることを、忘れていくような怖さもあります。
ここで、ひとつ考えてみてください。学校で学んだのは描く力です。届ける力を学ぶ機会は、あったでしょうか。
悔しさの多くは、作品の力が足りないからではないのかもしれません。届け方を知らないまま、外に出たことから来ているのではないでしょうか。
学んだのは描く力。
届ける力は、これから。
あなたの悔しさは、描く力の悔しさですか。それとも、届け方の悔しさですか。
悔しさを抱えたままだと、どうなるか
美大を出た作家は、この先をどう考えているのでしょうか。芸団協が2025年に、芸術家へ「10年後もこの仕事を続けたいか」を聞いています。
「続けたい」と答えた人は74.4%でした。悔しさを抱えながらも、4人に3人が、この道を続けたいと願っています。
美大を出た人のうち、絵だけで生活している人が何%いるのか。調べましたが、全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。
作品が収入になる入口は、もともと狭いものです。その入口を通れなかったことを、自分の力のせいだと思い込む作家も少なくありません。
学校では、課題があり、講評があり、見てくれる先生がいました。外に出ると、誰も課題を出してくれません。何を描き、誰に見せるかを、自分で決めることになります。
比べる相手が同級生だけになると、自分の歩みが見えなくなります。悔しさは、ますます大きくなっていきます。
悔しさを抱えたままだと、作品を見せること自体が怖くなります。見せなければ、作品は誰にも選ばれず、悔しさだけが積み重なっていきます。
見せない作品は、
誰にも選ばれない。
外から見てきた、わたしの感覚

わたしはアート業界の外から来た人間です。美大のことも、作家の世界のことも、詳しくはありません。
それでも外から見ていて、感じてきたことがあります。売れている作家は、ひと握りです。それは、ひと握りの市場の中でしか売っていないからではないか。
広い市場で売れば、活躍できる作家は、もっと増えるはずです。わたしが初めてアートを買ったとき、心を動かされたのは原画の力でした。
売れていない作家にも、本当に素敵な作品を描く人はたくさんいます。その作品が、まだ新しい市場に届いていないだけなのです。
一般の人にも、欲しいと思えば買えるお金はあります。とても高い作品は無理でも、一般的な価格の作品なら、買える人はたくさんいるはずです。
美大で学んだ年月は、作品の中に確かに残っています。足りないのは、アートを見てもらえる環境だと、わたしは考えています。
そして、もう1つ。本当にアートで生きていきたいなら、作家自身が本気になることが欠かせません。悔しさは、その本気の火種にもなります。
悔しさは、
本気の火種にもなる。
数字で答え合わせ:悔しさの横に、誇りがある
この感覚を、数字で確かめます。同じ報告書で、芸術家に「仕事に誇りを持っているか」を聞いています。
「誇りを持っている」と答えた人は、95.8%でした。
食べられない悔しさと、仕事への誇り。その両方を持ちながら続けているのが、多くの芸術家の姿です。「ひと握りの市場の中でしか売っていない」という感覚は、ここでは確かめられませんでした。美大を出た作家がどこで売っているかを調べた全国の調査は、見つからなかったからです。
学校で磨いた描く力は、まだ作品と出会っていない人にとって、初めて出会う本物の作品になり得ます。
届け方を身につければ、悔しさは少しずつ別のものに変わっていきます。自分の作品を部屋に飾ってくれた人の存在が、学んだ年月を意味のあるものにしてくれます。
学校で磨いた技術は、届け方を身につけたとき、いちばん力を発揮します。描く力と届ける力がそろえば、悔しさは自信に変わっていきます。
同級生と比べる物差しも、変わっていきます。誰が評価されたかではなく、自分の作品が何人に届いたか。その数は、自分で増やしていけるからです。
比べる物差しを、
届いた人の数に変える。
7ARTSで、一緒にできること

先に正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。悔しさそのものや、これからの進み方に答える仕組みは、7ARTSにはないからです。
そのうえで、作家が今日からできることがあります。学校で描いた作品と、卒業してから描いた作品を、並べて見直すことです。何が伸び、何を届けたいのかが見えてきます。
作品を見てもらう場所としては、7arts.jpの作家ごとのページがあります。
気持ちが沈む日が長く続くときは、ひとりで我慢しないでください。身近な人や医療機関、自治体の相談窓口に話してみてください。
仕事やお金の進め方で迷うときは、税理士や、地域の仕事の相談窓口も頼りになります。
ここで書いたことは、どれも作家自身にしかできないことです。届けたい人を決めるのも、作家自身です。
学んだ年月は、
まだ消えていない。
今日、ひとつだけやってみてください

卒業制作の作品と、いちばん新しい作品を、1点ずつ並べてみてください。写真でもかまいません。
次に、2点を見比べて、卒業してから伸びた所を1つだけ書き出します。色、線、題材、どんな小さなことでもかまいません。
最後に、その伸びた所がいちばんよく出ている作品を、見てほしい人に届けると決めてください。伸びた所を知っている作家は、悔しさを次の作品に向けられます。
書き出した伸びた所は、作家ページの作品の説明にも生かせます。自分の言葉で歩みを語れる作家は、見る人の心にも残ります。
悔しさを、誰かと比べる材料にしない。自分の歩みを確かめる材料に変える。それが、今日できるいちばん小さな一歩です。
作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する
出典
- 芸術家の働き方:公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)「芸術家のセーフティネットの構築に関する調査研究報告書」(2026年3月)



