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作家の悩み百選 No.080

学校の評価は、外でも通じるのか

「学校で評価されても、外の世界で通じるのか分からない」。学校の外にいる見る人を、数字と外から見た感覚で確かめます。

明るい美術学校のアトリエで、描き上げた作品が壁に並んでいる

こんな不安はありませんか

「学校で評価されても、外の世界で通じるのか分からない」

課題では良い点をもらい、講評でもほめられた。けれど、それは先生と同級生の中での話だ。

卒業したら、誰が自分の作品を見てくれるのだろう。学校の外に出た途端、何者でもなくなる気がする。

先生や同級生は、作品の技術や考えをよく見てくれます。けれど、作品を買う人が見ている所は、また別かもしれません。

美術を学ぶ学生の方から、こうした不安をよく聞きます。

ここで、ひとつ考えてみてください。あなたの作品を、学校の外の人に見てもらったことはありますか。

学校の評価は、作品を学ぶうえで大切な物差しです。ただ、外の世界で作品を選ぶのは、先生ではなく、見る人や買う人です。

学校の物差しと、
外の物差しは違う。

あなたは、卒業したあとの作品の行き先を、思い描けていますか。

外を知らないまま卒業すると、どうなるか

美術を学んだ人が、卒業後にどれだけ作品で生活しているか。全国の調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

ただ、卒業してすぐに画廊の取り扱いを得られる人は、限られていると感じます。

地方に戻って制作する人ほど、学校の外で作品を見てもらう場所は少なくなります。

学校の中には先生や仲間の目がありました。外に出ると、その目は急に少なくなります。

今の買い手だけを相手にした市場は、広がっているとは言えません。卒業後に入っていく世界の、今の姿です。

学校の中だけで評価を積み上げても、外の入口が限られていれば、作品は行き場を失いがちです。卒業を境に、描く手が止まってしまうこともあります。

外の世界を知らないまま卒業すると、不安は大きくなるばかりです。

学校の評価が高いことは、もちろん大きな強みです。ただ、それだけでは外の入口は開きません。

学校の外にも、
入口を持っておく。

外から見てきた、わたしの感覚

明るい白い展示室で、色あざやかな作品の前に立ち止まる人の後ろ姿
学校の外の人が、作品と出会う(イメージ)

わたしはアート業界の人間ではありません。50歳を過ぎて初めて作品を買った、いわば「外の世界の人」です。

実物の作品の前に立ったとき、原画の力を思い知らされ、一目惚れで買いました。外の世界の人も、作品そのものには心を動かされます。

外から見ていて、感じることがあります。売れている作家は、ひと握りの市場の中でしか売っていないのではないか、ということです。

もう1つ気になるのは、これまでアートが買われてきた場所の偏りです。百貨店や画廊など、ゆとりのある年配の方が集まる場所が中心でした。

今まで作品を買ってきた世代も、年を重ねています。今までの売り方で買われる作品は、少しずつ減っていくかもしれません。

だからこそ、学校で磨いた力を、まだアートに出会っていない人たちに向けて試してみてほしいのです。

広い市場で売れば、活躍できる作家はもっと増えるはずです。学校の外には、まだアートに出会っていない人がたくさんいます。

学校の評価が外で通じるかどうか。それは、外の人に見てもらわなければ分かりません。そして、その外側には、まだ誰も手を付けていない広い市場があります。

外の世界は、
思っているより広い。

答え合わせ:学校の外で、通じるか

この感覚を、数字で確かめようとしました。

けれど、美術を学んだ人の作品が、学校の外でどう評価されているのか。それを調べた全国の調査には、たどり着けませんでした。

「ひと握りの市場で売っている」という感覚も、今回は確かめられませんでした。ただ、学校の外には、まだ作品と出会っていない人が大勢いるはずです。

学校の外の世界とは、ふだんの暮らしの中の人たちです。その人たちに作品を見てもらえば、学校とは別の答えが返ってきます。

美術を学んでいない人に向けて作品を見せる経験は、学校の講評とはまったく違う学びになるはずです。

外の人の感想が1つ届くだけで、「通じるか分からない」は「通じた」に変わります。卒業後の道も、そこから見えてきます。

学校で身につけた技術や考えは、外の世界でも作品の土台になります。足りないのは、外の人に見てもらう経験だけかもしれません。

外の人が作品をどう受け取るかは、見せてみなければ分かりません。分からないからこそ、早く確かめる価値があります。

学校の外に、
最初の1人を見つけよう。

7ARTSで、一緒にできること

明るい街のカフェの白い壁に飾られた作品を、窓の外から眺める人の後ろ姿
学校の外にも、作品を見る人がいる(イメージ)

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。学生の進路や、学校での学び方に答えを出すことはできないからです。

そのうえで、学生のうちにできることを挙げます。

1つ目は、家族や同級生以外の人に、作品を見てもらうことです。アルバイト先や地域のお店の人など、アートに詳しくない人の感想こそ参考になります。

2つ目は、その感想を記録しておくことです。どの作品に、どんな言葉が返ってきたか。卒業後に作品を選ぶときの手がかりになります。

3つ目は、学校の課題で作った作品の扱いを確かめることです。売ったり展示したりする前に、学校の決まりを先生や窓口に聞いておきましょう。権利のことで迷えば、弁護士など専門家に相談してください。

どれも、今日からできる小さな準備です。学生のうちに外の目に触れておけば、卒業したときの不安は小さくなります。

外の人に見てもらうのは、こわいことかもしれません。けれど、こわさの正体は、まだ確かめていないことにあります。

学ぶうちから、
外の目に作品を届ける。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。学校の外で作品を見せる人を1人選ぶ、作品を1点見せる、返ってきた言葉を書き留める
今日、作家がやること

家族と同級生以外で、作品を見せられる人を1人選んでみてください。ふだんアートに触れていない人のほうが、かえって参考になります。

次に、その人に作品を1点見せます。スマホの写真でもかまいませんが、できれば実物を見てもらいましょう。

見せるときは、「どこに飾りたいと思うか」を聞いてみるのもおすすめです。

最後に、返ってきた言葉を、そのまま書き留めてください。良い言葉も、首をかしげられた所もです。

1人目の感想は、学校の講評とはちがう言葉で返ってくるはずです。その違いこそが、外の世界の物差しです。

学校の外から届いた最初の一言が、卒業後のあなたの物差しになります。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 75歳以上の人数:厚生労働省の資料(2025年の推計)
  • 日本のアート市場:文化庁「The Japanese Art Market 2024」(Arts Economics・Clare McAndrew)
  • 作家の数:文化庁資料(2020年)/ギャラリー・画商などの数:文化庁「The Japanese Art Market 2025」(2024年時点・骨董店なども含む)
  • ギャラリーの場所(66%が関東・うち59%が東京):文化庁「The Japanese Art Market 2024/2025」
  • 作品を買ったことがある人の割合(約16%):「日本のアート産業に関する市場調査2018」一般社団法人アート東京・一般社団法人芸術と創造(2019年3月4日発表・約2万人を対象)