すべての記事

作家の悩み百選 No.086

公募の書類に、毎回何日もかかる

「公募の応募書類を書くのに、毎回何日もかかる」。書類にかかる時間を減らす準備と、公募の外の入口を考えます。

明るいアトリエの木の机で、描き上げた作品の横に応募書類を広げる人の手元

こんな手間はありませんか

「公募の応募書類を書くのに、毎回何日もかかる」

公募の締め切りが近づくと、制作の手を止めて書類に向かう。作品の説明、制作の考え、略歴。

書いては消し、また書き直す。公募ごとに字数も書き方も違い、毎回ゼロから考えることになる。

書類ができたころには、締め切りぎりぎり。作品に向き合う時間が、また削られてしまった。

書類の出来が、作品の評価を左右するかもしれない。そう思うと、なかなか筆が進みません。

何日もかけて書いた書類も、次の公募ではまた形が変わります。その繰り返しに、疲れてしまう方は少なくありません。

ここで、ひとつ考えてみてください。あなたの作品を説明する言葉は、毎回ちがうものである必要があるでしょうか。

公募ごとに形は違っても、作品そのものと、あなたの考えは変わりません。何度も使える下書きを持っておけば、書く時間は短くできます。

言葉の土台があれば、
書類は速くなる。

あなたは、作品の説明を、どこかにまとめて残していますか。

このまま続けると、どうなるか

公募の書類にかかる時間を、全国で調べた調査は見つかりませんでした。数字が無いので、ここでは作りません。

ただ、作家が公募に力を注ぐ理由は、想像できます。

作品を発表し、評価を得る入口は、もともと限られています。公募は、その数少ない入口の1つです。

画廊の入口が限られる中で、公募は多くの作家にとって大切な入口です。だから締め切りのたびに、書類と向き合うことになります。

けれど、応募のたびに何日も書類にかかれば、1年に応募できる数は限られます。作る時間も、応募の機会も、両方が細っていきます。

締め切りの重なる時期には、どれかをあきらめるしかありません。挑戦の機会が減れば、作品が人の目に触れる機会も減っていきます。

書類の手間のせいで、応募をあきらめる公募も出てきます。それは、作品にとっても惜しいことです。

書類の手間が、
挑戦の数を減らしている。

外から見てきた、わたしの感覚

明るい木の机の上に、書類の紙と、描き上げた作品が並んで置かれている
締め切り前の机(イメージ)

作家の方からよく聞くのは、締め切り前の数日を、書類だけに使う場面です。書き終えたころには、筆を取る気力が残っていない。

わたしはアート業界の外の人間です。外から見ていて思うのは、画商やギャラリーの数は限られ、見られる作家の数も限られるということです。

だから、全員が同じ入口に頼ることはできません。公募も、その限られた入口の1つです。挑戦する価値は大きい。ただ、そこだけに力を注ぐと、ほかの道が見えにくくなります。

これまでは、ギャラリーや画商に作品を売ってもらうのが当たり前でした。ただ、その売り方では、お客さんはギャラリーにつき、作家にはつきにくいのです。

わたしは、作家が自分で立ち上がり、自分で売れる場所をつくることも大切だと考えています。本当にアートで生きていきたいなら、作家自身が本気になることが欠かせません。

公募の書類を整えることは、その本気の表れです。そして、整えた言葉は、公募の外でも作品を伝える力になります。

その本気を、書類のたびに一から絞り出すのは大変です。だからこそ、一度整えた言葉を、手元に残しておくことが大切です。

整えた言葉は、
公募の外でも働く。

答え合わせ:公募の外で、選ばれるか

この感覚を、数字で確かめようとしました。

けれど、公募の外で、作品がどれくらい直接選ばれているのか。それを調べた全国の調査には、たどり着けませんでした。

「入口は限られ、全員は頼れない。自分で売れる場所も要る」という感覚は、今回は確かめられませんでした。それでも、公募の審査だけでなく、見る人に直接選ばれる道もあるはずです。

しかも、公募のために書いた作品の説明は、そのまま買う人への言葉になります。作品に込めた思いが伝われば、飾りたい気持ちは強くなります。

作品に込めた思いや、制作への姿勢に共感してくれる人は、審査員の外にもいます。

公募のために何日もかけて書いた作品の説明は、そのまま、見る人への言葉として使えます。一度しっかり書いた言葉を、使い回せる形で残しておく。それだけで、次の応募も、作品を届ける準備も、ぐっと軽くなります。

書類の土台を一度作れば、公募にも、自分の売り場にも使えます。書く時間が、二重に生きる形です。

書類づくりで整理した言葉は、作品を見た人の質問に答えるときにも使えます。

一度の下書きを、
何度も使える財産に。

7ARTSで、一緒にできること

明るいアトリエの窓辺で、描き上げた作品の前に、整えた紙の束が置かれている
整えた言葉が、次の締め切りを軽くする(イメージ)

先に、正直にお伝えします。この悩みに、7ARTSはまだ答えを持っていません。公募の書類を書いたり、審査の通り方を教えたりする仕組みは、今の7ARTSにはないからです。

そのうえで、作家が今日からできることを挙げます。

1つ目は、作品ごとの説明を、短いものと長いものの2種類で書いておくことです。公募の字数に合わせて、選んで使えます。

2つ目は、略歴と制作の考えを、1つのファイルにまとめておくことです。新しい出来事があるたびに、書き足していきましょう。

3つ目は、応募要項の権利の決まりを読むことです。作品の写真や著作権の扱いで迷ったら、主催者の窓口に問い合わせ、必要なら弁護士に相談してください。

この3つは、公募の書類だけでなく、自分の作品を人に紹介するときにも役立ちます。書類の手間が軽くなれば、その分を作品に向き合う時間に戻せます。

公募の書き方で迷ったときは、主催者の募集要項をよく読んでみてください。過去の入選作の紹介も、求められている作品の手がかりになります。

土台の1枚が、
次の締め切りを軽くする。

今日、ひとつだけやってみてください

今日、作家がやることの流れの表。よく応募に使う作品の説明を短いものと長いもので書く、略歴と制作の考えを書き出す、1つのファイルにまとめて保存する
今日、作家がやること

まず、いちばん応募に使う作品を1点選び、説明を2種類書いてみてください。短い説明と、長い説明です。

短い説明は作品の第一印象を、長い説明は作品に込めた思いを伝える役目です。

次に、略歴と、制作で大切にしている考えを書き出します。

最後に、その全部を1つのファイルにまとめて保存しましょう。次の公募では、そこから選んで整えるだけになります。

一度作れば、あとは公募ごとに少し手を入れるだけです。

言葉の土台が手元にあれば、公募の書類は、何日もの作業から短い仕上げに変わります。

作品と新しい人が出会う場所を、一緒につくりませんか。7ARTSに作家として登録する

出典

  • 日本のアート市場:文化庁「The Japanese Art Market 2024」(Arts Economics・Clare McAndrew)
  • 作家の数:文化庁資料(2020年)/ギャラリー・画商などの数:文化庁「The Japanese Art Market 2025」(2024年時点・骨董店なども含む)
  • 買った理由:「日本のアート産業に関する市場調査2021」一般社団法人アート東京・一般社団法人芸術と創造(文化庁委託事業)